Cardician's Blog

映画鑑賞のようにマジックを楽しむ習慣を

【運動性記憶】効果的かつ正しく技を習得するための方法について

とあるきっかけがあったので、
前々から気になっていた運動記憶について調べてみましたところ、
面白いことがわかったので、シェアします。


◆運動記憶とは

正確には、「運動性記憶」と呼ぶらしいです。

自転車の乗り方、楽器の弾き方など、
言葉にして覚えるというよりも、身体が覚えるものを指します。

 

◆運動スキルの向上には、反復トレーニングが欠かせない

自転車の乗り方や楽器の弾き方って、
一度やったら覚えれるものではなく、何度も反復してトレーニングする必要があるのは、
感覚的、経験的にもわかると思います。

 

なぜ、反復トレーニングが欠かせないのか。という仕組みについてです。

 

なんらかの自分の動作の結果、快感が生まれれば、
その動作をもたらした脳内のルート(記憶)は強化されますが、

不快につながった場合、小脳の働きによって、そのルートは弱くなるとのことです。

そして、そのフィードバックを繰り返すことによって、
動作の成功パターンが脳内で強化され、運動性記憶に定着する。とのことです。

※かなりざっくり説明してます。 

 

また、イメージトレーニングでも、小脳は活性化するので、

運動性記憶の向上に、イメトレは確かに役に立つ模様です。

 

◆効果的な運動性記憶(手続き記憶)の強化の仕方とは

暗記物などは、よく、
「寝る前にやったほうが、寝ている間に記憶に定着するから良い」
と言われますが、
どうやら、一定の効果がある。とはまだ断言できないのではないか。という研究もあるようです。

 

一方、暗記物系(宣言的記憶と呼ばれるもの)ではない、運動性記憶と睡眠は関係しているのかどうか。ですが、

どうやら強く関係している模様です。

 

<研究紹介>

「トレーニング後の睡眠が、その後のパフォーマンス向上に影響しているのかどうかを調査した研究」

・グループ1:朝、トレーニング → その日の夜にパフォーマンス測定
・グループ2:夜、トレーニング → 睡眠 → 翌朝にパフォーマンス測定

 

<結果>

グループ2のほうが、パフォーマンスが向上していた。


→★ここまで読むと、日中ではなく、睡眠前にトレーニングしたほうが良いのか?と思いますが、、、、、

<研究紹介その2>

・グループ1の人の夜のパフォーマンス測定後、睡眠をとってもらい、
 翌朝に再度パフォーマンスを測定

 

<結果>

パフォーマンスが向上していた。

 

→★つまり、朝であろうと、夜であろうと、「睡眠」の後、パフォーマンスが向上。

 

※なお、同実験で、日中起きている状態で、4時間程度の間隔を空けてトレーニングをしたら、
 "徐々に"パフォーマンスは向上していった。とのこと。

 

★はい。ここで一つの結論がでました。
一朝一夕で手品は上達しません。一夜漬けはできません。
何日もかけて反復練習するしかないです。。。笑

 

<<<ただし、睡眠こそが、運動性記憶の定着を促す。というわけではなさそう>>>

 

<研究紹介:オフライン固定説>

「トレーニングを顕在学習で行うか、潜在学習で行うか。と、睡眠の関係について調査」

 

※顕在学習とは
 学習する意志を明確に持って、学習すること
  →すぐ覚えれるけど、すぐ忘れるらしい笑

 

※潜在学習とは
 学習意識や意図を持たず、無意識で反復することで、自然と体が学習すること
  →覚えるのに時間はかかるが、忘れづらいとのこと。

 

<調査内容>

・学習→覚醒状態で12時間過ごす(寝ない)→テスト
・学習→睡眠を含む12時間過ごす→テスト

の2パターンについて、

顕在学習でやってもらうパターンと、
潜在学習でやってもらうパターンを検証。

 

つまり、

グループ1:顕在学習→寝ない→テスト
グループ2:顕在学習→寝る→テスト
グループ3:潜在学習→寝ない→テスト
グループ4:潜在学習→寝る→テスト

の4パターン。

 

<結果>

グループ2,3,4でパフォーマンスが向上した。
 →潜在学習の場合は、睡眠の有無に関わらず、12時間経過したら、パフォーマンス向上した。

※潜在学習のグループに、学習から15分後にテストを行っても、特段パフォーマンスが向上していたわけではなかったらしい。

つまり、学習後の一定の時間確保が影響を与えている。 

 

<考察>

★睡眠こそが、スキルの定着を促す。ということは言えないが、
 スキルの定着を促すために、睡眠は効果的だ。ということは言える。

 

★間隔を空けずにずっと練習を続けなくても、効率的な周期で練習をすれば、ちゃんと運動スキルは向上させれる。むしろ練習しっぱなしは非効率かも。

 

★顕在学習によるトレーニングのほうが、スキルの定着には良い。
 ということが成立しているのかどうかは、わからない。

 この論文内でも、運動スキルに関する言語情報は学習過程に影響を及ぼすかもしれないけど、
 明確にはわかってないから今後の課題だろう。と示しています。
 ※2007年の論文なので、最新では判明しているかも。

 

参考文献はこちらより↓
http://nirr.lib.niigata-u.ac.jp/bitstream/10623/20243/1/12_133-147.pdf


◆マジシャン向け

「手さばきを綺麗にしたい。技法の精度を高めたい。という時のトレーニングはどうすれば良いのか」

あるあるな悩みだと思います。
僕もかつて悩みました。
僕の解決策は、「綺麗な手さばきを意識して練習する」という一般的なものでしたし、
多くの人がそのようなアドバイスをしていると思います。

 

で、科学的にはどう言われているのでしょうか。

 

包丁技術力向上の為の教育方法の検討という研究を援用します。

2018年度の京都文教短期大学、食物栄養学科の入学生80名を対象とした研究です。
(若干、論文としては標本数、少ない気はしますが、w)

 

原典はこちら↓
https://kbu.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2895&item_no=1&page_id=13&block_id=37

 

<研究結果>

・包丁技術は、正しい扱い方についての指導なく、トレーニングを続けると、
 確かに、切断する速度は向上するが、
 均一に切断するなどの精度に関する技術については、特筆して向上はしなかった。
 ※反復練習で、速度は身につくが、正確性は向上しない

 

「均一に切断すること」を何度も教示された生徒は、
 速度の向上に加えて、正確性も向上した。

 

つまり、

手さばきとか技法を綺麗にしよう!と思うのであれば、

闇雲に長時間練習しても無駄。

「綺麗にするぞ」という意図を持って練習しなければ意味がない

ということは正しそうですね。

 

正しい知識を持っていなかったら、

どれだけ包丁技術をトレーニングしたとしても、

所詮ファストフードレベルしか作れない。フレンチは作れない。

技術に対する正確性がないため、創作物の品質が上がらないから。

 

やっぱり、正しい知識に対するアクセス容易性を担保しなければ、

後進の育成には厳しいものがあるかもしれないですね。


◆◆◆◆◆まとめ◆◆◆◆◆◆

・運動性記憶を高めるためには、反復トレーニングが欠かせない。

・イメージトレーニングも、運動性記憶を高めるのに効果的。

・睡眠をちゃんと取ることが、運動性記憶を高めるのにかなり効果的な模様。

・一朝一夕で新たな運動スキルを身につけることは、ほぼ無理。簡単なスキルに限る。

・闇雲に反復トレーニグをしたところで、速度は向上しても、精度は向上しない。

・正しいやり方を知った上で、トレーニングをすれば、速度も精度も向上する。

 

・結論
 ちゃんと正しいやり方を知った上で、トレーニングして、ちゃんと睡眠を取る。
 ということを大切に、日々トレーニングを続けていくことが、結局のところ大事。


以上です〜〜〜〜